遠足

2006-04-20

[]地獄の呉服

 銀紙亭六助落語CD。古本屋で買いました。

 初めて聞く噺だけどどこかで聞いたような展開の馬鹿さが好み。他の人がやってるのも聞きたいなと思って検索してみたら、どうもこれ古典落語風の創作落語らしいです。銀紙亭六助という人はそういうのをたくさん作っているのだとか。

 他の人がやってるのを聞きたいと思ったのは、つまりその、この人の演じ方に若干不満があるということですが、そうか自分で作ったのか。まあそういうこともありますよね。

 

 あらすじ。江戸でたいそう繁盛している仙石屋という呉服屋があったがある夜強盗が押し入り一家皆殺しにされてしまう。店の者は全員一緒に閻魔様の前に出て裁かれるが、店の中にいつも売り上げを誤魔化して懐に入れていた者が数名いて、その中で主だった者は地獄行きと閻魔様が言ったのでお互い罪をなすりつけあって騒ぎになる。

 わあわあわあわあ……

 どうにもキリがありません。

「閻魔様ァ、お後つっかえてんですがね」

「おう、もうちょっと待ってくれ。…つまり新八、お前が金を誤魔化そうと言い出して…」

「あっしが悪いんじゃありません、あいつが」

「いやァ、あの野郎が」

 わあわあわあわあ……

 閻魔様もとうとう腹ァ立てて、ええいッめんどくせえやッてんで店ごと地獄にやりました。

 突然地獄に現れた呉服屋。店の主はすぐ商売を始める。

 なにしろ商いが服を着て歩いているような人ですから、

「俺ァ商売してねえと心持ちが悪くなるんだ」

 なんてんで……地獄で心持ちがよくなっちゃァいけねえんですが、

「仕入れ先探してこよう」

 気心知れた番頭さん連れて、針の山ァ越えて行っちまいました。

 残された店の者も、店にあるものを鬼や亡者たち相手に売り始める。

「鬼さん。鬼さん。鬼さんこちら」

「……妙な呼び方するね。あッ! おおい! 地獄で商売すんなってあれほど…」

「あらッ。まァ、近くで見れば見るほどいい男……こんないい男が腰巻き一つなんていけませんよォ、もったいない。ね、これなんていかがですか。いい色でしょう? 血の池でちょいと染めましてねェ、色落ちのしない新しい工夫があるんですよォ。目の覚めるような青いお体によく映えて……こりゃァ亡者どもがほっときませんよ。見たらブルブルッて震えますよォ。ねェ鬼さん……(声をはりあげ)おにィーさんッ!」

「(照れて)よせやいウヘヘ……俺ァそんな年じゃ……いくら?」

 仕入れルートを確保するために店の主が亡者を励ましたりするところに無駄な人情話風味を盛り込みつつ、最後には一家皆殺しにした強盗たちが打ち首獄門になって地獄にやってくる。また強盗に入られ、今度は匕首で刺しても死なないので店の者は全員縄で縛られて金目の物を強奪される。

「なんてこった、売り物をみんな持ってかれちまう」

「畜生、この縄ほどけ、ほどけーっ」

「地獄にこんな悪い奴がいるたァ思わなかった」

「地獄にほどけだ」

 END。余談ですが、地獄でほのぼの、というのは私がもっとも好むシチュエーションの一つです。ほっとしますよね。地獄に行っても何も心変わりせず今までの暮らしを続けてしまう、という登場人物(この噺の場合は店の主とか)になぜこんなにあこがれてしまうのかな。

 だからなおさら、もっとこう演ってほしいなあというのがあったんだと思う。強盗に皆殺しにされるとことか、「匕首でグサーッ、ギャーッ」とか、がんばって軽くしようとしてるためにかえって軽くなってない感じがする。地獄の亡者の暮らしもそうだったけど。

 

 もう一つの「馬長屋」は郭噺でこれも自作。別に珍しくないのだろうけど、なんとなく郭噺で自作って難しい気がするなあ。