遠足

2006-03-29

[]閻魔香炉

 三好栄介はもう7年も前に亡くなっているわけですが、実は私がそれを知ったのは半年前でした。何気なくショックだった。その時点で未読だったのは多分5冊、今回久しぶりに読んだので多分あと4冊になりました。寂しくなるなあ。以下ネタバレ。

 

 この作品も例によって主人公が途中で姿をくらまします。「三好は主人公を行方不明にしないと話を進められないのか?」とよく言われたあれ。初期・中期作品ではなんとか行方不明にしないですまそうという苦心の跡が見られたり、行方不明になる時もそれなりに必然性があったりしたけど、後期は完全に開き直っちゃってるあれ。好みの分かれるところだと思いますが、私は後期の方が好きです。閻魔香炉は完全に後期型なので嬉しい。

「湯津子さん、僕は」

「言い訳なんて聞きたくありません!」

 湯津子は八一に背を向け、テーブルについた手に力をこめた。

「どんな理由があってもとても許せそうにない。だったら聞いても無駄でしょう?」

「…………」

「私は間違っていますか?」

 返事はない。湯津子は室内の沈黙にふと違和感を感じて振り返った。八一の姿は消えていた。

 湯津子は眉を寄せ、部屋の中を見回した。ドアにも窓にも鍵がかかっている。完全な密室だった。

 そしてそこから100ページ出てこない主人公。私が後期作品の方が好きなのは、主人公が出てない時の方が面白いからでもあるんですが、例によって今回も主人公がいなくなったとたんに生き生きしてくる周囲の人々。中でも正木さん(香炉の前の持ち主)の、香炉を手放す時のエピソードは泣いた。そういえばああいういい話が出てくるとたいてい本筋と何の関係もないエピソードですが、そういう執筆ポリシーでもあるのかしら。

 主人公が戻ってきてからは……まあ、けっこうよかった……と思う。でもやっぱり私はこの人の作品では、主人公が行方不明時の鬼のいぬ間感がすごく好きです。残りの4冊のうち2冊はわりと新しいはずなので読むの楽しみ。でも未読がなくなるのはどうもなー。