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夢学

2008-09-01

[]さいごの竜のはなし

ジャケットが格好良かったんでつい手に取り、あらすじ見たら結構面白そうだったので購入。


世界で最後の一人になった竜人が、人と手探りで暮らしていくという話。

よくある特設機関に主人公は所属しているのですが、小隊としての態を取ってはいるものの、実は主人公以外は架空名義というまともな機関とはとても思えないような状況。

主人公はそれを身をもって知りながらも(最初から事務所兼詰め所に一人分の設備しかなかった)、特に不平不満を述べようとはせず、たった一人で荒事解決という仕事に従事します。といっても一話完結の勧善懲悪で人助けするいい話だったりするのですが。

そんな日々に、書類不備で間違えて配属されてきた新人の女の子が、主人公の小隊に所属することになってさあ大変という流れ。

竜人というだけあって、額の端から上に向けて角が二本あって(センサー代わりらしい)、明らかに人と異なる特徴である羽があって、むちゃくちゃ邪魔そうな太い尾があります。そんな感じの、ぼくのかんがえたちょうじん的なセンスなのに、中身が典型的なヘビースモーカーで性格もおっさんじみてるもんで、最初は主人公の外見に超ビビッてた新人も段々呆れと共に馴染んでくるんです。その辺の描写が無茶苦茶うまい。


「何でこんなに何もないんですか?」

と、新人が少し馴染んできたころに、あっさりとした事務所について尋ねるところがあるんですよ。結構な広さの割に使ってないスペースが半分以上あるもんで。

「それはな、片付けるのが面倒だからだ」

と返されてがっくり肩を落とす辺りなんかでは、徐々に馴染んでる感の片鱗がうかがえます。

しかもこれは賛否があると思いますが、上の会話直後に新人の悪魔ちっくなデフォルメキャラの絵で

(本当か……? 小物を描く手間を渋ったんじゃないのか……?)

と舞台裏を勘ぐる腹黒さも個人的には気に入ってます。悪魔コスが可愛かっただけとかそんなんじゃないよ、ほんとだよ。


寡聞にしてこの作者の過去作をまるで知らない(と言うよりも検索しても何も出てこなかった)のですが、この人は空を飛ぶ描写に無茶苦茶力を入れているような印象があるんですけど、余程好きなんでしょうか。あとがき漫画でも描いてあったのは深夜のコンビニ店員との交流話くらいなんですが。

飛ぶときには羽のどこに力を入れて、旋回時には羽のどういう動作でどんな動きが出来るかというのを執拗なまでに描いている気がします。感心してしまった。

それはそうと、一巻ではなんで主人公が最後の竜人になったかというのがまるで、伏線すらも出てきません。導入に絞ったのかなー。割と普通にごろごろ獣人亜人的な存在は居るので、なんぞ話の核心に迫るエピソードでも隠し持っていると思っていたのですが伏線も出さないとは思わなかった。気づかなかっただけかね。

2007-10-17

[]惑星アルバ


ジャケットに惹かれてDVDを借りてきました。

身も蓋もなく言えばSFぽいジュラシックパークというもので、中身はえーと、コメディになるのかな。


惑星監査官のジャック・ディーが惑星アルバを実地監査している最中で行方を晦ました。

惑星アルバで何があったのかを探りにきたジャック・ディーの息子セイロン・ディーは、惑星アルバの見過ごされた混沌を目撃する!


これだけならファンタジーサスペンスの趣も感じ取れますが、画面暗転時に出てくる文句が映画のシリアスさを根底から崩しています。以下は冒頭に出てくる文章。


不幸にも度々勘違いする者が居るので今一度書き記そう。惑星アルバは、ナントカ保護団体に好きなだけ保護をさせるために作られた密林まみれの人工惑星であり、ナントカ保護団体が一人も居ない理由に呪いや陰謀などといったことは一切関係ない。それは都市伝説にも満たない中傷レベルの話だ。彼らがどうなったのか知りたければ情報統合局に行くといい。ただし性格がまるで変わってしまったり、ある部分の記憶が抜け落ちていたとしても責任はもてない。<惑星アルバ 広報>


セイロンが最初に足を下ろした宙港から、アマゾンの秘境のような光景が見渡せたときは世界ががらりと変わっておお、と思わずにいられません。冒険好きならまず間違いなく心ときめく情景です。

冒頭でジュラシックパークみたいなものだと書きましたが、ここで恐竜役をやるのはアルバに生息する生物ではなく人間でした。ここは僕が説明するより作中文句を引用したほうが判りやすいかも。


動物保護団員らしき人を見た? それは結構。だが気をつけたまえ。精神がまともではない。精神がまともではない動物保護団員は動物図鑑にも記載されているので、確認すると良い。情報は頼れる友となる。健闘を祈る。<惑星アルバ 観光>


文句は終始そんな調子なので何も問題はないのですが、肝心の本編自体はシリアスです。サバイバル要素満載です。どっかんどっかんやるようなものではなく、知恵を使って切り抜けていくタイプの地味め映画。森の人、と呼ばれる虎みたいな生物と仲間になるあたりが一番萌えました。無言の連携というか友情と言うか、そう言う要素は大好きです。

2006-07-24

[]皇日和(すめらぎびより)


「私が皇族の一員に…?」

というぶっとんだ展開で一時話題になった皇日和。ですが内容が内容だったためか、それともただ単に盛り上がりが小さすぎて売れなかったのか、絶版になっていたらしく単行本の入手は半ば諦めていたところこないだ古本屋で叩き売られていたところを見つけてしまい、一も二もなく購入してしまいました。作者の根木内勇三先生もこれ以来見ないので、皇宮警察に捕まったとかそんなおしとやかなニュースが定説化しています。


一生に一度くらい言ってみたいと思いませんか。

「私が皇族の一員に…?」

これはそんな願いが現実にあったら、という物語です。


言えいたくてもさすがにこれは言えません。というか、どんな状況でなるんですか。

内容はまぁ言わばサクセスストーリなんですが、舞台が凄いからね。皇族だしね。現代で。

テレビで連日流れる皇室での揉め事。最初主人公も特に所感も持たずに流し見をしているのですが、ある日学校から家に帰ってきたら家の前に黒塗りの車。主人公は当然何かあったと不安を感じるのですが、もうワァワァ騒がれるだけ騒がれて主人公はようやく話の概要だけを理解します。そこで出るのがあの台詞。

「私が皇族の一員に…?」

なんだかんだで戸惑いつつも始めた皇族としての生活。最初は当然周囲も「賤民風情が我々と同じ血筋だと…?」と過剰な脚色つきで非難の目を向けてくるのですが、主人公のひたむきにただ良い方向へ良い方向へと向けられるポジティブなパワーを見ているうちに感化されて、顔はそっぽを向きながらも困ってる主人公に手だけは出してあげるみたいな、そんないじらしさを見せるようになるんです。

今回購入できたのは全三巻のうち一巻だけなのでその辺りで終わるのですが、一応二巻三巻の展開だけは存じております。読んだことはあるからね。あの時買わなかったのが悔やまれる。

まぁ一巻の展開ではないのであまり触れませんが、結局皇族としての生活を終わろうとしてその旨をつげると、最初主人公を一番疎んじていた嫌味が一番名残惜しそうなんですよね。何か耐えているといった感じの表情が印象的でした。凄く萌えた。


これ、他にも色々皇族の伝統的な話とかあってその辺りも面白かったのですが、さすがにそこまでは覚えていないので残りの二冊ももっかい読みたいなあ。

2006-05-13

[]空中田園都市


空の子供は地上に憧れた、というあらすじの頭だけで惚れてしまった。月刊スターラックで藤堂弘一が描いているやつ。

地上はあらかた沈んだという設定らしく、かろうじて進んだ科学力で地球に浮き島を置いて住んでいる、という状況らしいです。時々宇宙船らしき船が描かれているので、他の星にも当然のように住んでいるんだろうと思う。

背景とかは無茶苦茶綺麗なんですが、別に癒し系漫画なわけでもなく、主人公がどうやったら地上に降りられるだろうか、と模索してます。研究所に潜入だとか結構無茶もやるのでジャンルとしては一応冒険ものになるのかもしれません。

しかしヒロイン(?)の影が異常に薄い。昔から主人公の世話を焼いているらしい二つ上のお姉さんがヒロインだと思ったのですが、大して出てこない…。でも他にヒロインらしい人もいないんですよね。特にそういうのはないのだろうか。脱出方法を見つけて、今月号で実行してもそこですら全然関わってこなかったし。

しかし空中都市の周辺にある膜のようなバリアを一瞬だけ弱くするようにして、その隙にパラシュート持って飛び出すとかいう無茶をやったはいいんですが、どうやって帰るんだろう。

まだきちんと単行本も出ていないような漫画の書評? をやる気になったのは、僕にとって今月号が神がかっていたからです。空中都市からの落下描写が好きすぎる。なんであんなに気持ちよさそうにかけるんだろう。あとやっぱり背景が無駄に綺麗。


それにしても、藤堂先生が他の月刊誌に描いてる宇宙ガムとかも好きだから、藤堂先生の作品は肌に合ってるのかもしれない。昔のも掘り返してみるか。

2006-05-11

[]博士と僕


ジャンルは多分SF。作者は横柳とか言う人で、全然聞かないなあと思ってネット調べたら二流だのB級だのいう言葉乱発されてて笑えた。でも全部読んでみるとそんなにこき下ろされているわけでもなく、割と愛されてるっぽい。

というか、今回古本屋で暇つぶしに買った「博士と僕」も悪いというほどではなかったし。ちょうど的確な意見があったので引用。

「横柳新雄の書く話はずば抜けているわけではないが、期待しないで読むと意外と面白い」

一冊しか読んでないで言うのもなんだけど、まさにそんな人だと思う。

そして内容は全編の八割くらいが博士と、博士に作られたアンドロイドである「僕」のメールのやりとりという、これだけ見ると壮絶に詰まらなさそうな小説。

「僕」は違和感なく人間社会に紛れ込んでいて(というより、アンドロイドやらロボットやらが認知されてる)、日記のようなものを毎週送り、博士もそれに返事をする、と言った内容なのですが、「僕」も告白されたり恋したりと忙しい…て、そういえばこれは青春小説と分類することもできるんですね。

「僕」はどこかで働いているらしく、日々仕事は完璧にこなしているのに時々無意味に怒られて「理不尽だ」と書いてあるところなんかは、凄く微笑ましい。人間じゃないのに人間臭いというのが素敵なのかしら。

ちなみに博士の方は主に「僕」が書いてきたことへの返信が主で、ほとんどこの人についての情報は得られず、なんというかカウンセラーのような感じがします。こうするといいよと示したり、それは自分で判断しなければいけないと突き放したり。唯一博士っぽいところは巻のちょうど真ん中らへんにある機械用語満載な部分くらい。そこは「僕」のパーツのいくつかが老朽化しているということで、対処を求めた時の返事なのですが。なんでも自分でやる子ね…。

あと反ロボット結社などがあり、それに狙われたりもしているのですが、そのことだけは何故か微塵もメールに書こうとしない姿勢にも惚れます。


恋愛辺りの「僕」のうじうじぶりは日本人じゃないと書けなさそうなねちっこさがあっていい感じでした。偏見かもしれませんが、米人とかその辺はスパっとしてそうだし。

でも「僕」が恋するとは思わなかったなー。作中、明言はされないんですが、明らかにその恋した女性の描写が妙に多い。というか、文面からして恥ずかしくて抜粋する気にもなれないほど青春満載。ポエムもどきみたいなのまで入ってたし。あれ、本当にポエムのつもりで書いたのなら横柳先生はポエマーにはなれないと思う。


あとはあれだ、人間と機械の壁にぶちあたって「僕」が思わずメールの中で書いた「博士の子供に、なりたいです」に対する「お前は既に私の子供じゃないか」はありがちといえばありがちなのに泣きかけた。王道に弱いんだ。

2006-04-17

[]J・ハギンズと少女


↓で書いた「シックスマンズエフェクト」のドマンズの人が出ている作品をレンタル屋で見つけたので思わず手にとってしまいました。

ドマンズ役の人は主人公のハギンズで、冴えない独身サラリーマンだけど密かに女装趣味を持っている、というコメディ? 人懐っこい顔のプチ中年太りがひらひらのドレスとか着るので面白い。いや、痛々しくすらある。

肝心の本編は女装中のところを引っ越してきたばかりの一家の娘さん(アゼリー)に見つかってしまうんですが、アゼリーはハギンズを本当に女だと思って接するんです。というか、表情や言動からして気遣ってるとかじゃなくて本当に素っぽい。

ハギンズは内向的な性格っぽい感じで、それは女装中でもサラリーマンの時でも大して変わりません。女装中の方が少し明るかったかな。性格はもうドマンズと比べると真逆に近い。タバコも吸わないし。違和感がない辺り俳優は凄いなあ。

ラストはコメディなのにしんみりきました。ハギンズがスーツ姿で「実は男なんだよ」と告白すると、アゼリーは少し躊躇ってから無言でぎゅっと抱きつくんです。もう、アゼリーに悶えまくりでした。

それにしてもハギンズの人は何であんなに魅力的なのか。顔から体形からしてもう俳優っぽくないのに。特典の俳優コメントで「撮影中にドクターペッパーが切れちゃってさ。思わず休憩のときに買いだめしちゃったよ」とか言ってるのに。

2006-04-16

[]シックスマンズエフェクト


時間が出来たんで、前から見ようかと考えていた「シックスマンズエフェクト」を観てきました。


立場も身分も違う、何の繋がりもない男女六人の元に同じ手紙が届く。内容はどれも同じで、「狙われているぞ!」というもの。六人は不審に思いながら注意しつつ生活していると、確かに見張られているような感覚に襲われる。敵は誰で、理由は何なのか―。


これ、まぁ最初に見張られていると思い込んでいるのは飛んだ見当違いで、六人が六人とも互いをストーカーか何かと思って生活しているんです。でも別に敵が出てきているわけでもなく、どうなるかさっぱりわからんのですが、観ているとその六人が各々持っている後ろ暗い秘密があり、どうやら「誰か」はそれを狙っているのではないか、と疑い始めた頃に新たな影が! という展開。

スリラーというのかサスペンスというのか、淡々と話が進んでいくわけですが、殆ど最終局面になって六人が最初の頃仕掛けていた罠のようなものが、勝者としての座につきかけた悪役に対して次々発動していく様は痛快の一言でした。

中でも好きなのはドマンズなのですが、あの人が殆ど一人で先導して展開を進めつつぐちゃぐちゃにしていたのには感嘆するやら呆れるやらでした。何であのプチ中年太りがこんなに気に入ったのか。ドマンズはこうして感想を書くときに思い出すとタバコを吸ってるシーンばかり浮かんでくるのですが、ドマンズの吸い方は実に似合ってて格好よかった。ドマンズの出てくるシーンで一番好きなのはやはりタバコ関連なのですが、別れた奥さんに「まだタバコ止めてないの?」と呆れ顔で聞かれたときもゆっくり一服して「なぁに」と返すところです。全然答えになってないのに惚れた。

ドマンズは大抵のことは「はっはっは」と適当に誤魔化すのですが、深刻なことになると部下の責任まで背負ってしまうのでもう本当格好いい。僕もあんな年のとりかたしたいです。

2006-04-12

[]ムーンダスト


少し古い漫画になりますが「ムーンダスト」。全六巻。何年か前にアニメ化してましたよね。OPがオリコンの結構上位に入ってたとかで盛り上がっていたことだけは覚えてます。ちなみに今連載してる「マーズダスト」の一応前作。

最初三冊くらいはノリ的にも雰囲気的にもただの絵が巧いハーレム漫画なのですが、その次の二冊は殺したり殺されたりのオンパレードでヒロインの九割が死に、最後の巻で錐を持って追いかけてくる最後のヒロインから逃げる辺りはもう本気で怖かった。で、主人公がヒロインを返り討ちにした後全ての真相が一冊足らずで明かされていくわけですが、月のペンダントが全てのきっかけになっているのは唖然としか言いようがありませんでした。

それに何より今となっては信じ難いのが、当初は明らかにギャグ漫画だったんですよね。二巻とかで牧野が銃で撃たれたのに平然としていたのは展開の前後からしてギャグ時空だったからで、四巻で改めて撃たれた時もまた蘇るんじゃないか、と思わず期待してました。そっちはマジだったわけですけど。

三巻の終わりで三好が月のペンダントを見つけたことがあぁまで凄惨な猟奇漫画にするとは思わなんだ。メインヒロインの口調も笑えるくらいに変わってましたし。というか、別人です。

主人公といちゃついて、「やめてよぉ」と頬染めてそんなに嫌そうでもなく言うのが一巻。別のヒロイン捕まえてマウントポジションとって殴り、「もうやめて…」の呟きに「やめるわけないだろうがぁっ」と愉しそうに叫ぶのが五巻。

余りにも気になったんで色々調べてたんですが、ストーリー急変の理由は作者が彼女に酷いふられ方をしたのがおおよその原因らしいです。でもふられたからっていくらなんでもありゃちょっと酷すぎるよ。方向転換直後はさすがに非難轟々だったようですし。でも当初の路線だと無難に終わっていたのでしょう。怪我の功名といっていいのかは微妙です。ちなみに、「マーズダスト」は近未来路線で現在二巻まで出てますが、今度はいつ惨劇になるのかと読者は多分みんなドキドキです。

2006-04-07

[]デスウォッチ


すっかりデスノートの陰に隠れてしまっていますが、ファンの間では結構な人気だった宮間ハルトモの「デスウォッチ」が完結したので。というかネットの板ではデスノート敵視してるけど、全然土俵が違う気がする。まだ完結したのがほんの先月なんで単行本派の人は注意。


ある大功を成した男がした願い事。それは自分の死期を知りたいというものだった。

死神は男の願いを適え、男にシンプルなデザインの腕時計を与えた。それはデジタル式で、時間がどんどん減っていくというもの。それがゼロを差した瞬間、男は死ぬのだ。


これはデスノートとは違い手に汗握るかのような駆け引きもなく、従容と己の死期を受け入れた主人公が自分の死に当たっての身辺整理がメイン。

主人公が離婚した奥さんに会いに行ったら引きこもりになった息子を押し付けられ、倒産まで後一歩な自分の会社で、長年勤めていながらも割と無能だった部下が出した案を倒産覚悟で通し、合間合間を縫って古い知人に会いに行ったりするのですが、そのあとの大逆転劇→幸福の中で主人公の死という流れは判っていたのに胸が高鳴りました。

こうやって概要書くとなんてことはない話のはずなのに、面白かった、と思えるのはやはり宮間ハルトモの人物描写とか場面描写とかが巧いからだと思う。

最後、病床にあった主人公に息子が「父さん、遣り残したことはない?」と聞いて、結婚以来何十年ぶりかになる久しぶりのタバコを吸いながら、「おめぇは元気になって、煙草もうめぇ。もうねぇよ」とやせ細った顔に満面の笑みを浮かべる辺りは立ち読みなのに軽く泣いた。

2006-04-06

[]ふるさとはダムの下


「ふるさとはダムの下」を読みました。これ、長いことリアルにあった悲しい話かと思っていたんですが、アマゾンのレビュー読む限り予想とは違う感じだったんで興味を持って手を出してみたのですが、中々良かったです。

まず最初に説明しておくのは淡々と事実を描く「さよなら僕の故郷…」的な話ではなく、能力バトルものであるということ。


ストーリー概要。

主人公が仕事帰りにラジオを垂れ流していると、いきなりザーっという音に変わって妙な声が聞こえてきます。単語単語でその声を主人公はよく聞き取れなかったのですが、それから毎日同じ時間にその現象が起こるようになって、その声の内容を理解した主人公は戦慄を覚えます。

タイトルにあるとおり主人公の故郷は沈んだ村なのですが、何故かそこから去っていった人が次々と狙われているというのです。

そして何故か沈んだ村から形見代わりに持ち出してきたもの一つ一つに神が宿っていて、それに守られつつ反撃の機会を伺う…というライトノベルっぽい感じです。


見所はといいますと、あまり沈んだ村に愛着を持てず、ラジオからの声にも懐疑的だった主人公が故郷のことを知り、自分の先祖との縁を知るにつれて決意を固めていく過程でしょうか。

主人公が形見代わりに持ち出したものは村のものではなく祖父の懐中時計なのですが、それに宿った神に祖父と村との思い出、村が沈むまでの経過を聞いていくうちに幻想となった村を誇りに思う辺りはしんみりしました。

ただ不満があるとすれば、沈んだ村の人が狙われる理由が完全には明かされなかったことでしょうか。作中でそれらしき匂いのするキーワードはちらほら出たのですが、完全に説明はされなかった。どうもネットで評判を見るに、まだ続編があってそちらで完全に明かされるはずが、なんか内輪で揉めて出なくなったとのこと。残念です。ジョジョのスタンドのような能力を生かした頭脳戦は中々面白かったのに。

…あれ、そういえば物に神が宿るようになった理由も特に触れられてなかった気がする。


でも一応これ単品で読んでもちゃんと完成していたのでまぁいいかな。懐中時計の神と主人公のやり取りは後半なんか息がぴったりで、アメリカの相棒映画のようでした。

最後、ダムの上に立って水底を見つめて終わるのは読んでて切なくなった。

2006-04-01

[]唐草灯篭


この漫画を描いたヒロシマギヤオウは「現実にはありそうでない定番」を必ず盛り込んでくる。というよりも、困ったらそれでごまかすような匂いがぷんぷんするので、それで毛嫌いされる反面、そこがいいというファンを惹きつけています。

学園ものを描けば転入生の主人公はパンをくわえた少女と出会い頭にぶつかり、その後必ず教室で再開するし、よほどシリアスなものでもなければメガネの登場人物は男女問わずに素の目を3で表現してしまうのは手抜きなのかウケ狙いなのか判断しがたいところ。でもビン底メガネで、素顔が期待されるキャラですらそれだったのはひどすぎでした。

そして一度だけ描いたサラリーマンがテーマの漫画「漢道中」では、ギヤオウの知識不足か面倒になったのか、主人公が一ページ目で辞表を上司のハゲ頭に叩きつけたし、それ以降は何も考えていなかったのかいきなりハードボイルドな展開になり、銃で撃たれたと思ったら父親の形見のロケットに当たって助かった辺りはさすがに非難轟々でした。さすがにサラリーマンがテーマで始まりながら、最後は惑星を越えて全宇宙を救うとかいう展開になるとは僕も思いませんでしたが。


そして今回の単行本「唐草灯篭」でも、相変わらず部分部分は読めても全体の展開はさっぱり読めないので素敵です。最初の一話は長いとはいえ、現代をテーマにしながら田舎から上京してきた唐草模様の風呂敷を背負ったお婆ちゃんがでるわ、その孫(ネクラな理系高校生。主人公)はフラスコ爆発→アフロの王道ギャグをやらかしたりといつもながら目指すところがわかりません。

帯には「ギヤオウの破天荒ラブコメ推参!」とか書いてありましたが、暫くはラブの要素が一切なくコメディ要素のみで進んでいき、三話目の途中で同級生の女子と一緒に階段を転げ落ち、気づいたら心が入れ替わっている、という行き当たりばったり感満載な展開を迎えます。

その後もギヤオウが大好きな「現実にはありそうでない定番」である、成績優秀、スポーツ万能、家は世界の企業も一目置くほどの大財閥、というキャラが出てきて体だけ女になっている主人公にアプローチしてくるという展開。

一応巻の終わりの方ではラブコメをしているのですが、同時に一話で出てきた主人公のお婆ちゃんの持ち物を狙って変な黒服が湧いてきているので、多分続刊の表紙と帯はラブコメ要素があったことを忘れさせてくれるような違う方向へ向かっているに違いない。ラブコメで始まりながらどのジャンルで終わるのか楽しみです。

2006-03-31

[]海に還る(中)


作者の大木光春が失踪前に書いた、最新作にして最後の作品かもしれない、と言われ続けている「海に還る(中)」を、読んだ。完結を待とうと思っていたのですがこの最新作が発刊されてより五年。正直待ちきれなくなった、というのが正しいです。

以下ネタバレ。

ちなみに上巻は海から打ち上げられた人魚の死体を巡っての騒動、という感じでしたが、次の中巻では少し話が動き始める感じです。

主人公の安田が「人魚の置手紙を持っている」と言う怪しい男とあってからは安田も物語の中心に居て、主人公の面目躍如といったところでしょうか。上巻は後半ほとんど置いてけぼりだったし。

ヒロインが研究主任の娘、という設定なお陰で人魚の死体に近づけたのはよかったですが、体から出る腐臭を嗅いで意識がおかしくなってきている辺り、ホラーな展開でもやりたかったんでしょうか。体の異常描写が怖すぎる。というか、あのまま行くと下巻では確実に人間以外の何かになる。

下巻は出たとしても人間は海に住めるのではないか、的な展開になりそうな気がします。前作の「日本浮上」とか「保釈の後」を読む限りでは。

あと結局解読できなかった人魚の置手紙の内容は実に気になります。